西村繁男さんの絵本『おふろやさん』。
「これから、あっちゃんは、おとうさんとおかあさんとあかちゃんといっしょにおふろやさんにでかけます」
文章は、最初に出てくるこの一文だけ。
あとは西村さんが絵だけで、おふろやさんの様子を伝えます。
じっくり見ずにはいられない、細部までこまかく描きこまれた西村さんの絵。
見つけて思わずくすっとなるような遊び心があちこちに散りばめられています。
たとえば…男湯にも女湯にもある広告看板。この看板もどんな看板にしようか電話帳をめくりながら考えて、スポーツだったら《元気堂》、まだ当時高いといわれていた歯医者さんは《安井歯科》、なんていうふうに、こっそり遊び心をしのばせたとのこと。
刊行当時は「日常の場」であったおふろやさん。ひとつの世界にいろいろな人の物語が混在している日常を伝えられるように、おふろやさんに集った人々を描くときには、ひとりひとりにちょっとした物語を考えながら描いたそうです。
絵が語るたのしさをたっぷり感じることのできる字のない絵本。
自分が住みたいまちを想像するとき、そのまちにはいつも西村さんの描くおふろやさんがあります。
毎日通えたら、たのしいだろうなぁ。
❖『おふろやさん』 こどものとも傑作集 【SOLD OUT】
西村繁男・作
発行:福音館書店
発行年:1983年
状態:経年による黄ばみがわずかにありますが、状態良好です。
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