【ふるほん紹介】満月をまって

 もうすぐ満月。

 つぎの満月がくるまでのあいだに、とうさんはかごを作る。満月の日に、とうさんはハドソンまでかごを売りに行く。うちには、馬も荷馬車もないから歩いていかなくちゃならない。ぼくはいつもるすばんだ。

 

 ぼくたちがすんでいる山は土地がやせていて、作物がつくれない。だから、かごを作る。トネリコ、オーク、ヒッコリー、カエデ。かごをつくるのにはトネリコがいちばんだということをぼくはしっている。

 

 月日がたち、ぼくはすこし大きくなり、ようやくとうさんといっしょに街へ行ける日がやってきた。

 いまから100年以上むかし、ニューヨーク州ハドソンからそれほど遠くないコロンビア郡の山間に、かごをつくって暮らしている人たちがいた。それは昔ながらの手法で作られた丸くて茶色いかごで、芸術品ともいえるほどすばらしいものだった。

 

 アメリカの手工芸について研究した著者が描く、かつてたしかにあった暮らしの物語。バーバラ・クーニーの繊細な絵の中で、まあるい月は眩しく輝き、ハドソンまでの道を照らしている。


❖『満月をまって』¥700  SOLD OUT

 メアリー・リン・レイ/ぶん

 バーバラ・クーニー/え

 掛川恭子/やく

 あすなろ書房 2000年

 状態:良好

 

枇杷舎

静岡市鷹匠の路地裏で週末の一時オープンする 屋根裏小べやのようなちいさなふるほんやです

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