昨年、夏葉社さんより出版された庄野潤三さんの作家案内といえる一冊。
単行本未収録の作品、全著作案内、家族の原稿などに加え、巻頭には34ページにもわたり、
山の上にある「庄野さんの家」の美しい写真が収められている。
庄野作品を読む上で、大きな意味をもつ「家」。
「いま、あったかと思うと、もう見えなくなるもの」を書きとめることによって、
「それひとつでは名付けようのない、雑多で取りとめのない事柄」の集合、
「いくらでも取りかえがきくようで、決して取りかえはきかないもの」の集合である
「ささやかな日常」をこの世に残し、「詩的空間のふくらみを与えようとした」、と
庄野さんが自著のあとがきで語っている。
庄野さんが見つめ続けた「ささやかな日常」は、この山の上の家から生まれた。
野鳥がやってくる庭
夕食後に奏でるハーモニカ
長女からの手紙
いつもの散歩道
庭に咲く英二伯父ちゃんのばら…
庄野潤三さんの本を読むと、身の内のずっと奥の方に、ぽっと温かな明かりが灯る。
❖『山の上の家』 ¥2,420(税込)【SOLD OUT】
著者|庄野潤三 ほか
発行|夏葉社
発行年|2018年
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